香りの観察日記

一般人が個人的な香りの感想を記録していくためのブログです。

セルジュルタンス/ニュイ ドゥ セロファン

気温23℃/湿度55%

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筆者はフローラル系がどうも苦手だ。というか食わず嫌いしている節がある。フローラルといえばキュートで可憐、はたまたゴージャスで華やか、そんなフェミニンなイメージが自分と掛け離れすぎていてなかなか挑戦することが出来ない。

そんな私が「ここのフローラルなら大丈夫だろう」とブラインド購入した香水がいくつかある。今回はその中の一つ、セルジュルタンスのニュイドゥセロファンの話をしたい。

セルジュルタンスの香りは複雑でクセがあるものが多く、誰もがいい香りだと言うものは少ない。しかしニュイドゥセロファンはその中でも比較的纏いやすいフレグランスだと思う。とはいえ、クセが無い訳では無いが。

和訳すると「セロファンの夜」。メインの香料は金木犀だ。薄暗いヴェールの下の金木犀ジャスミン、ムスク、粉っぽい石鹸類の香り。もっと詳しくノートを分析したかったのだが、あまりに複雑すぎて筆者の鼻では他の香料を嗅ぎ分けるのは不可能だった。しかもストレートな「いい香り」で終わることが出来ない。考えれば考えるほど訳が分からなくなる。しかし、不思議なのは、香る度に脳裏にあらゆる情景が浮かんでくることだ。

薄汚い夜の街、ビルの間に僅かに見える星々、ホテル街を吹く風、一仕事を終えた女の俯いた横顔、汚れた路地裏に咲く花、慣れないシャンプーやボディソープの残り香。

ルタンスの香りはいつも何かを思い出させ、纏った者をイマジネーションの世界へと引きずり込む。ニュイドゥセロファンはどこか後ろめたく美しい。

そして決して重たい香料を使用していないにも関わらず一貫して夜の印象が付きまとうのは、おそらく全体的にモヤがかっていてシャープさや明るさが無いからだろう。だがそこがいい。ソーピーな香水は山ほどあるが、ここまでミステリアスな石鹸系の香りは初めてだ。

日が暮れて風が少し冷たいなと感じた時、このフレグランスを纏いたくなる。夏の夜のひと時に、一人センチメンタルな空想に浸るのはなかなか楽しいものだ。