香りの観察日記

一般人が個人的な香りの感想を記録していくためのブログです。

GIVENCHY / π

気温27℃/湿度65%

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先の記事に記したように、纏う環境で印象をガラリと変える香水は非常に多い。その中でも突出して面白い表情の変え方をする香りがあった。

GIVENCHYのπである。

いつだったか、オリエンタル香にハマっていた冬場に購入したきり長らく出番を待ち続けたベンチの守護神だ。(ごめんよ…)

さて、その香りはと言うと、トップはマンダリンオレンジにバジルやローズマリータラゴンがスパイシーに弾ける。が、ものの数秒でバニラとトンガビーンの濁流が押し寄せ、強烈な甘さに支配される。

冬場に纏った時にはそこから一層こってり感が強まり、激甘官能バニラになるだけだった。公式ではウッディオリエンタルとのことだが、何コレただの超絶バニラじゃん!と、当時は特別な魅力を感じることが出来ずにいたのだった。

しかしつい最近、寝香水としてたまにはシンプルなグルマンも良いかなとなんとなく手を伸ばしてみた。さあ来い!とばかりに特濃バニラを待ち構えていたのだが、πはその期待をいい意味で裏切ってきた。

トップは冬場に香った時と同じようにフレッシュでスパイシー。その後すぐバニラが現れるのだが、その傍らでウッドやハーブ、スパイスがきちんと香っており、不思議な奥行き感が出ている。甘いのに清涼感すら感じる、ハーバルでひんやりとしたバニラだ。動く度にふわりとバジルの青みやアニスの薬草っぽさが見え隠れするのがとても面白い。

この心地良い不安定さはおよそ一時間ほど楽しめる。ラストは杏仁豆腐のような柔らかくクリーミーな甘さに変わり、なるほど…確かにウッディオリエンタル…かもしれない。いや、むしろジャンル分けするのも難しいくらい、素敵な気まぐれさがある。夜に纏って朝まで香っているのだから持続性も抜群だろう。

なんというか、ろくに言葉を交わしたことも無いクラスメートと初めて会話し、君ってこんなに魅力的だったんだ!と今までの時間を惜しむような気分になった。

そんな香りを、筆者は家でのリラックスタイムや寝香水として最近頻繁に使用している。

幾何学的なボトルと黄金色のジュースは美しく、インテリアなどの邪魔をしない所もまたいい。未だに「πはこういうノートの香水だ」としっかり掴めない、だからこそ何度も手が伸びてしまう。

俗に秋冬物だと言われる香水も、暑い季節になって改めて香りを確かめると新しい発見があるものだ。それをはっきり教えてくれたベンチの守護神は、意外なタイミングでレギュラー入りを果たした。